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模型のページ

模型とは本来、作成過程も楽しみの重要な要素なのだが、
近年完成品が売ってあるとはいかがなものか。
といいつつ、年々未製作でお蔵入りするのが増えている現状で文句は言えないしw

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レッドストーム・ライジング

 

 

文藝春秋製上下巻

トムクランシー作。トムクランシーと言えば、レッドオクトーバーシリーズ・・・ライアンシリーズで有名。最近ではオプセンターものを連著で執筆している。前回、Type22フリゲートのバトルアクスに関する彼の記述を書いたところ、「詳細よろ」要請がいくつか来たので、ここにまとめて置いときますね、的な。

アマゾンでの紹介

出版社/著者からの内容紹介
バクー油田の爆発事故から危機感に陥ったソ連の先制攻撃は世界をどう動かしたか? 第三次大戦をテーマにした軍事冒険小説超大作

内容(「BOOK」データベースより)
シベリア西部の油田・石油精製施設がイスラム教徒の襲撃で潰滅的打撃を受けた。ソ連が経済・軍事面での力を維持するにはペルシャ湾沿岸の油田を押えるしかない。それにはNATO軍が邪魔だ。かくして党政治局はNATO軍への奇襲と謀略活動を計画する。―現代戦の実相を描いて前作『レッド・オクトーバーを追え』を凌ぐ超大作。

日本で発行されたのが1987年9月10日・・・まだソ連が存在し、冷戦真っ最中の時代。ちょうど俺が結婚した年(1987年10月25日に結婚)で、結婚式後に宿泊したホテルにも持っていき、翌日ホテルのソファーで読んだ覚えがある・・・それほど面白かった。

上記紹介の通りの内容で、現代戦を世界大戦規模で描いた超大作。ハープーンミサイルの攻撃、米空母機動部隊V.S.ソビエト空軍爆撃部隊の戦闘、原子力潜水艦の戦い・・・。現代戦特有の速いペースでの戦局推移、迫力、スリルが満載。特に潜水艦戦の記述には迫力があり、さすがレッドオクトーバーをヒットさせるだけの実力(知識)がある作家だ。ライアンシリーズでは、ライアンは軍の出世の階段を上りきり、普通登れない最後の階段・・・最高司令官まで登ってしまった。つか、米国で軍の最高司令官って大統領だしw このライアンシリーズも楽しかったが、自分的には「シリーズ化されず単発で終わってしまった」このレッドストーム・ライジングが最高傑作だと思っている。世界を巻き込み、戦略核の応酬一歩手前まで、イコール世界破滅の一歩手前まで行ってしまう様子が、淡々と描かれ、当時は心底恐怖したものだ。

ちょうどこの時期、「人類最後の最終兵器」SLBMのトライデントIIが配備され、米国が事実上の「先制攻撃能力」を持った時期だった。それまでのSLBM(潜水艦発射戦略核弾道ミサイル)は命中精度が悪く、CEP(半数必中半径:要するに命中精度)がそれまでは数百メートルだった。これでは、強固に防御された地上のICBM(大陸間弾道核ミサイル)基地を破壊できない。核ミサイル戦では、「相手の報復能力を残してしまったら、報復される・・・両者共倒れ」というジレンマがあり、どちらも先制攻撃はできなかった。CEP数百メートルのミサイルでは、相手の核戦力を確実に、しかも同時に全て排除することは不可能で、だからにらみ合いしか方法がなかった。これが冷戦である。しかし、トライデントIIミサイルは、こんな常識を塗り替えた。CEPが数十メートルになったのだ。これなら一撃でICBM基地を破壊可能。しかも、潜水艦発射。米本国からソ連本国へ向けて核ミサイルを発射した場合、発射の瞬間は衛星でとらえられるので、ソ連側にはミサイルが着弾するまでに約20分の猶予が与えられる。すなわち、ICBMを撃ち返すことができる。ところが、ソ連沿岸(北極海)にいる潜水艦から発射された場合、着弾まで5分未満。「最上層部への事実伝達」「世界が崩壊してもいいという最上層部の判断」「最上層部から全国の核攻撃基地(ICBM基地、戦略空軍基地、戦略原潜通信基地)へ攻撃命令発令」「核ミサイルの発射シーケンス」、以上を平時に突然5分未満で実施することは、事実上不可能。トライデントIIミサイルは弾頭が14(1発のミサイルに、14発の核爆弾)。それを搭載するオハイオ級原潜は、24発のミサイルを搭載可能。全力発射した場合、14×24=336発の核爆弾(広島型の数百倍の威力)がソ連全土に降り注ぐわけで、オハイオ級原潜1隻でソ連の地上にある全核攻撃基地は崩壊する・・・つか、副作用的にソ連自体が丸ごと崩壊する。しかも、5分未満では対応不可能なので、戦略原潜以外の核戦力を全て失う・・・一方的にソ連の負け。この関連の資料(書籍)を各種読んだが、「トライデントIIミサイルが複数のオハイオ級に搭載され、ソ連の裏庭(北極海)をうろつくようなことになれば、ソ連は事実上の敗北宣言か滅亡しか選択肢がなくなる。そうなる前に・・・トライデントIIミサイルが十分な数配備される前に、ソ連が一か八かの勝負に出る可能性は否定できない」という結論が数多くあって、「世界、終わるかも」と落ち込んだものだ。

それから4年後、ソ連が体制崩壊し、冷戦が終わった。冷戦を描いたレッドストーム・ライジングは、もう二度と現実にはならないことが確定した。当時、あれだけ心配した第3次世界大戦も核戦争も、パラレルワールドの出来事になってしまった。だから今では、この作品はSFだと思っている。近代戦装備同士のガチ戦闘・・・もう二度とあり得ない時代になったからこそ、この作品を心から楽しめる。既に10回以上通して読んでいるが、自分の残りの一生で、まだまだ数十回は読むと思う。みんなも是非一度、読んでほしい作品だ。