フォークランド紛争が悪いんだ。フォークランド紛争で英海軍が戦ったから悪いんだ。元々英軍好きだった俺だが、たかがフリゲート1隻に大枚1万数千円をはたいてしまうという暴挙に出たのは、フォークランド紛争が悪いんだ。
1982年初頭、アルゼンチンで政府が国民の不満をそらすため、フォークランド諸島(マルビエナス諸島:アルゼンチン側の呼称)問題を取り上げる。国粋主義者たちの動きが活発になり、鉄の女サッチャー激怒。4月2日にアルゼンチン正規軍4千名がフォークランド諸島へ上陸し、制圧。同日、英国はアルゼンチンとの国交を断絶、議会から機動部隊派遣の許可を得る。4月5日、機動部隊出航。6月7日、英軍がフォークランド諸島上陸に成功。6月14日、アルゼンチン軍降伏(6月17日、アルゼンチン大統領失脚)。
5月4日、Type42駆逐艦シェフィールドが、アルゼンチン軍のシュペルエタンダール攻撃機から発射されたエクゾセを被弾。右舷中央部に命中。不発だったが、未燃焼推進薬の燃焼により深刻な火災発生。総員退艦後曳航されるも、5月10日に沈没。
被弾したType42駆逐艦シェフィールド(右)と、救援のために接舷するType21フリゲート・アロー(左)
豪華客船のように見えるのは俺だけですかそうですかw
5月21日、Type21フリゲート・アーデントが、アルゼンチン軍のスカイホークの攻撃を受け、500ポンド爆弾複数を被弾、シーキャットSAM(対空ミサイル)が作動不能になり事実上対空戦闘能力を失う。再度スカイホークの攻撃を受け、為す術もなく沈没。
5月23日、Type21フリゲート・アンテロープが、アルゼンチン軍のスカイホークの攻撃を受け、500ポンド爆弾2発被弾。2発とも不発だったので、爆弾処理班が処理するも、処理中に爆発、大火災発生。総員退去後、火は弾薬庫に達し大爆発。艦は真っ二つに折れ、沈没。
サン・カルロス水道で沈没中のType21フリゲート・アンテロープ
5月25日、Type42駆逐艦コヴェントリーが、アルゼンチン軍のスカイホークの攻撃を受け、500ポンド爆弾3発を被弾。1時間後沈没。
被弾したType42駆逐艦コヴェントリー
俺が21歳、大学2年生。彼女つくって麻雀とバイトに明け暮れていた頃、南大西洋ではこんな壮絶な戦いが繰り広げられていたわけだ。第二次大戦後、これほど大規模な「海戦」は他に例がない。というか、冷戦構造が集結し、国家間の戦争は起きにくくなった現状を考えると、「巨大な国力を消費する大規模海戦は、もう二度と起きえない」とも予想できる。すると、フォークランド紛争の海戦は、「人類史上最後の大規模海戦」とも位置づけられる。・・・だから俺、フォークランド紛争が大好きなんだw
エグゾセミサイルを被弾してしまったType42駆逐艦シェフィールド。戦後の「対艦ミサイル攻撃によって実戦で撃沈された防空駆逐艦第一号」となったわけだ。でも、まだなんか「近代戦だなぁ」と感慨にふけることができるからましな気がする。可愛そうなのは、上記残りの3隻。3隻とも、旧型機(スカイホーク)の、しかも「自由落下爆弾」にやられてる・・・。ミサイルより遙かに遅く、サイズも大きい旧式攻撃機など、接近しようとしただけで、艦の半径5km以内に入った瞬間、シーキャットかシーダートに撃墜される・・・というのが常識的な予想だ。というか、そう言った「艦に敵性航空機を近づけない」ために、巨額の建造費が使われているわけで、自由落下爆弾のリリース位置まで敵性航空機の接近を許してしまったType42およびType21は・・・さぞや皆さん悔しかっただろうな。
さて、今回手に入れたType22フリゲート・バトルアックス。上記フォークランド紛争で2隻撃沈されたType21フリゲート・アマゾン級の後継モデル。1979年から配備開始され、全部で16隻建造された。バッチ1(ブロードソード級)の4隻は、2隻(ブロードソード、ブリリアント)がフォークランド紛争に参加。バッチ2(ボクサー級)は6隻、バッチ3(コーンウォール級)が4隻建造された。
世界初!!「艦砲非搭載の軍艦」として有名。バッチ1とバッチ2は、Type21やType42らが搭載していた「114mm砲」を搭載せず、対空戦闘は「シーウルフ」ミサイル、対艦戦闘は「エグゾセ」ミサイルと割り切った設計。だが、バッチ3になって114mm砲が復活、対艦ミサイルもエグゾセ(仏国製)からハープーン(米国製)に変更、近接防御用にゴールキーパーCIWS(30mmガトリング)が追加になった。けっこう英国は節操がないw
今回買ったホワイトエンサインモデルズ製1/700バトルアクスは、バッチ1の4隻のうちの1隻で、フォークランド紛争も経験している。トムクランシーの「レッド・ストーム・ライジング」(第1刷が1987年、文春文庫)の中で、このバトルアクスが米国のOHペリー級フリゲートのルーベン・ジェイムズとチームを組むシーンがある。
英艦<バトルアクス>はすでにそこへ来ていた。3マイル前方に見える船体には微妙な違いがあり、マストに白色旗が翻っている。信号灯がこちらへ向けて点滅しはじめた。
「ルーベン・ジェイムズとは何者なりや」と<バトルアクス>がきいてきた。
「どう返事をしましょうか、艦長」と信号手が聞いた。モリスは笑った。不吉な呪縛がとれた。
「信号を送れ。『少なくともわれわれは、姑の名を艦名とはしない』」「分かりました!」その兵曹は喜んだ。
(下巻P.167より引用)
英艦<バトルアクス>は<ルーベン・ジェイムス>より大きい艦のように見えた。実際には12フィートほど短いのだが、700トン重く、建造者の思想を反映して、設計に様々な相違があった。そいつはアメリカのフリゲート艦(ルーベンジェイムズ)よりまぎれもなく美しい。船体の線はおとなしく、上部構造とのバランスが実に良くとれている。上部構造は、駐車場みたいなやつでなくちゃんとした船の上に、しっくり彫刻されているかのようだった。
(下巻p.203より引用)
緑字のトムクランシーの記述通り、米国フリゲートのペリー級は、上部構造物が超巨大で、まさに「立体駐車場」。一方の英国フリゲートのブロードソード級は「美しい」。豪華客船の佇まい風である。かつて、「美しい」と表現された軍艦に巡洋戦艦フッドがある。そう呼んだのはチャーチルだ・・・英国は軍艦にさえも「美しい」という形容詞を与える。一度は地球を支配した余裕か?
さて、Type42駆逐艦よりも優美で大きいType22フリゲート・・・ん?駆逐艦よりフリゲートの方が大きい?
Type42駆逐艦バッチ1 全長125m
Type22フリゲート・バッチ1 全長131m
ね?不思議だけどね。元々Type42駆逐艦は、高額で大型(全長154m)だったその前のType82駆逐艦が1隻のみで後はキャンセルされたことを受け、より小型で安価な駆逐艦を目指したために、「フリゲートより小さい駆逐艦」という不名誉な状態になってしまった。・・・みんな貧乏が悪いんだ!!
今回買ったガレキのレジン製バトルアクス。久しぶりの艦船ガレキ。心配したとおり、豪快に船体が反っていたw 船体中央が盛り上がっていた。最大盛り上がり量約1cm!!爆。大爆。反りすぎ!! しかたなく、クランプによる「長時間矯正」とした。
エッチングがすごい。何がスゴイって、精密すぎw ドラゴンやピットロードなんかでは太刀打ちできないレベルで、こんな細いの、どう加工するの?的な。髪の毛を縦に串刺しにできるレベル・・・俺にはとても太刀打ちできないレベル。作る前から打ち負かされてどうする!?
面白いのが、武装パーツ。ピットロードの「英軍用現代装備」一式がそのまま入っている。マニアにはたまらない。ちなみに、ピットロードのType42駆逐艦シェフィールド(現在10年以上作成中w)でもこの一式の大半が余った訳だが、それが「シャルンホルスト魔改造」の原動力になったことは言うまでもない(かつ、聞く価値もないw)。
いずれ完成したら、米国フリゲートのペリー級と比較撮影し、いかに米国が実用主義一辺倒で「美しさ」など求めないのかということと、いかに英国が「優美で美しい」軍艦を創るのかを証明したい。がんばれ俺!!お蔵入りなど許すな!!・・・10年以上作成中のシェフィールドも、そろそろ完成させてやらなきゃなw がんばれ俺。忘れるなよ俺w