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オマエら、ぬこたんを軽く見ない方がいいぞ。ぬこたんはオマエらを軽く見てるぞ。

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2006年3月2日

エピソード20:ガムテープ(前編)

猫はネチャネチャやネバネバが嫌いだ。
俺も嫌いだ。
ジュースをこぼしたところがネチャネチャするのは我慢できない。
夏、汗で身体がネバネバするのは最悪だ。
夏、体中の汗がネバネバになり、ジュースをこぼしてそれが乾燥しかけたベンチに座るくらいなら、潔く身を投げる方を選ぶ。
それが猫というものだし、猫の生き方だ。

消防時代に少年マガジンで、アフリカ大陸の残酷物語が載ってた。
部族の拷問で、体中に蜜を塗り、アリの巣の近くに放置するというのがあった。
もちろん、アリに食われるのは想像を絶する苦しみだろうが、猫族にとって体中に蜜を塗られることの方が拷問だと思った。

で、猫的猫族はどうかというと、やはり病的にネチャネチャやネバネバを嫌う。
それを最初に目撃したのは、まだイチ(長男、ブチ、デブ、馬鹿、天然)が在命中のことだった。

ペル(次男、完璧黒、普通の猫)が、寝転がってTVを見ている俺の目の前を横切る。
ペル(次男、完璧黒、普通の猫)の身体で、俺の視界の下半分が遮られる。
視線は自然にペル(次男、完璧黒、普通の猫)の方へ向く。
歩いていたペル(次男、完璧黒、普通の猫)が急にペシャッ!と崩れ落ちた。
後ろ足を盛んに舐めたり囓ったりし出した。
ひどく苛立たしげだ。
一瞬、足の裏に怪我でもしたのかと心配になったが、よく見ると、 ペル(次男、完璧黒、普通の猫)の後ろ足の裏には、荷物からはがしたガムテープ(紙)の切れ端がついていた。
安心して、ペル(次男、完璧黒、普通の猫)の様子を眺めていた。

よほど粘着力が強いのか、なかなかガムテープの切れ端が取れない。
牙を立てようにも、ガムテープの切れ端は小さく、しかも全体が完全に肉球に張り付いてしまっている。
舐めて取ろうにも、そこまで密着してしまったものはなかなか取れない。

次第にペル(次男、完璧黒、普通の猫)の苛立ちがつのり、ついにペル(次男、完璧黒、普通の猫)の中で何かがキレた。
ペル(次男、完璧黒、普通の猫)は一番手近にいたイチ(長男、ブチ、デブ、馬鹿、天然)に襲いかかり、激しく攻撃を始めた。

「ちょっとちょっと、なにすんのYO?俺何もしてないじゃんYO!ちょっとヤメてYO、痛いYO!!」とイチ(長男、ブチ、デブ、馬鹿、天然)は悲鳴を上げるが、「うるさい!ネチャネチャがくっついてムカつくんだよ!!」とペル(次男、完璧黒、普通の猫)は容赦しない。
ちなみに俺は猫語検定準2級だ。
「そりゃないよぉーーー」とイチ(長男、ブチ、デブ、馬鹿、天然)が返す間もなくペル(次男、完璧黒、普通の猫)はまたその場にペシャッ!と崩れ落ちて、 後ろ足を盛んに舐めたり囓ったりし出した。
どうしても我慢できないようである。

哀れに思った俺が剥がしてやったが、あっけなく、簡単にガムテープの切れ端は取れた。
こんな弱い粘着力でくっついたものが取れないのか?と思った瞬間、ひらめいた。 →ひらめきの図

こんな、荷物から剥がして粘着力が落ちたガムテープの切れ端でも、アホな猫の野郎は、あれだけパニくった。
では、粘着力バリバリの「未使用新品」ガムテープが足裏にくっついたらどうなるであろうか。
いわば、「ガムテープ地雷」である。

ガムテープは家にあったので、地雷自体の準備はOKである。
問題は、猫の足裏に俺が貼り付けては意味がないことである。
俺の「科学的欲求による科学的追求(別名「いたずら」)」に猫どもは慣れてしまっていて、大抵のことには驚かないし、最後には俺が必ず助けるということも知っている。
だから、猫どもには「自主的に」地雷を踏ませなければならない。

そこで重要になってくるのが、地雷を設置する「場所」である。

家の中には「猫様ライン」がある。
世界中どこでも気ままに移動する自由を持つ猫であるが、狭い家の中という地勢的条件により、必ず猫様が通る「ポイント」が家の中には必ずある。
日露戦争の対馬海峡、WW2のドーバー海峡やキール運河河口だ。
我が家の対馬海峡は、玄関から居間へ入る戸口だ。

猫どもは、玄関に設けられた「猫穴」を通って外界へ出て行き、猫穴を通って家へ入ってくる。
玄関に面した部屋は二つ。
一つが俺の部屋で、このドアは開けられないようになっている(俺の部屋側で、タンスでふさがっている)。
もう一つが居間への出入り口である。
したがって、このドアを通らないと、猫どもは外界へ出られないし、家の中へ入ってこられない。

この我が家の対馬海峡にて、猫ストウェンスキー率いる猫どもバロチック艦隊を迎え撃つべく、人的猫族の東郷平八郎提督こと俺の率いる連合艦隊地雷部隊が激突した、まさにその瞬間が今日のその時です。

地雷として使用するガムテープは、粘着面を上にして設置されなければならない。
ところが、紙製のガムテープは粘着面が露出していると、反り返ってしまうという性質を持つ。
この性質故に、地雷としてのガムテープは実戦での使用実績が乏しい。
ガムテープの接着面を上にして、その両端を折り返して地面(畳)にくっつければよいのだが、この折り返しの調整が難しい。
折り返しが少ないと、反り返る力に畳の接着面が耐えきれず、ガムテープは剥がれてしまう。
折り返しが多すぎると、猫どもの足にくっついた粘着力に勝ってしまい、単なる「足裏掃除マット」になってしまう。
まさに真珠湾攻撃直前に帝国海軍が直面した「浅深度魚雷」問題のような、難問題である。

また、ガムテープの大きさも問題である。
小さすぎたらしっかりと足裏に粘着される確率が低くなる。
大きすぎたら、ペル(次男、完璧黒、普通の猫)のようにその場にペシャッ!と崩れ落ちたとき、足裏からはみ出た粘着部分に猫どもの毛がくっつく可能性がある。
さすがに、毛にガムテープは残酷だ。
身体をきれいに貫通するFMJ弾は許されるが、身体を破壊するダムダム弾は禁止されるという「戦場の倫理」と同じである。
地雷は踏ませたいが、毛にガムテープがべったりと張り付くような「致命傷」を猫どもに負わせるつもりは毛頭無い。

最後まで対馬海峡か津軽海峡か宗谷海峡か迷った東郷平八郎は、ついにあることを発見する。
それは、「猫は敷居を踏まない」「猫は中央を通る」ということだ。

毛にガムテープをつけさせるような地雷設置は出来ないため、地雷「原」は設置できない。
たった一つのピンポイント設置が条件である。
約1週間にわたって、海峡(玄関と居間をつなぐ戸口)を通過する猫どもを観察した俺は、猫は絶対に敷居を踏まず、敷居をまたぐことを発見した。
戸口の敷居の幅が12cm。
一方の猫どもの前足と後ろ足の間の長さは約17cm弱(まだ子猫)。
しかるに、敷居に沿って約5cmの幅が「地雷設置ゾーン」である。
これでx軸に沿ったゾーンは決定した。

 

ただしこれには条件がある。
開口面の横幅が狭い場合は、敷居を踏むこともあるのだ。
観察の結果分かったのは、開口面の横幅が、猫の身体の横幅の約2倍を下回ったときには、猫は敷居を平気で踏む。
そのため、せっかくの戸(スライドする戸)なので開口面調整が可能なのだが、これを極端に狭くして地雷設置のY軸に平行なゾーンを狭くすることは困難になった。

が、開口部の広さを変えながら観察した結果発見したことであるが、猫は開口面の中央を通る。
横幅1m以上の広い開口面の場合はそうでもないのだが、自分の横幅の2〜3倍程度の「狭い」開口面では、必ず中央を通る。
そのため、作戦時に引き戸の開け具合で猫どもの平均横幅約8cmの2.5倍である20cmと決定し、その中心線から左右各2cm離した幅2cmのラインをY軸に沿った設置ゾーンと決定した。

 

以上を組み合わせると、次の図のようになる。

オレンジ色の矢印が指す紅いゾーンが、地雷設置位置である。

 

 

座標の第1象限で位置を決定し、いよいよ決戦の時が迫る。
そしてその時、・・・・・。

後編へ続く。